メタマテリアルはトレンドになるか?

テクノロジー

先日発表されたイギリスのスピーカーメーカーKEF社の同社製スピーカーに音響メタマテリアルを採用するという記事に関連して、メタマテリアルについて現在自分が考えていることをまとめました。

音響メタマテリアル採用のスピーカーが話題に

一週間くらい前の話になるけど、KEFっていうイギリスのスピーカーメーカーの記事が話題になっていたな。

どういう話題かというと、音響メタマテリアルを使ったスピーカーを近々発表するということ。

一応、KEF公式のYouTube動画張っておくけど、製品の映像はほとんどないから、そこんところはヨロシク。ただ、冒頭の画像が音響メタマテリアルの部分みたいだ。

Metamaterial Absorption Technology – The latest innovation in loudspeaker design

AV Watchの記事が日本語で分かりやすいと思うんで、リンク張っておくな。

KEF、“音のブラックホール”開発。「まもなく」製品化
イギリスのスピーカーメーカー「KEF」は、革新的と謳う吸音技術「Metamaterial Absorption Technology(MAT)」をAcoustic Metamaterial Groupと共同で開発。同技術を活用して「聴き手が吸い込まれていくような、臨場感あふれる類無きピュアなサウンド」を楽しめるスピーカ...

オレの第一印象は、音響とはいえ、メタマテリアルも市販品に登場するまでに来たか、という感じだったな。

実はオレ、メタマテリアルは論文誌で話題になっていた2000年頃からちょっと気になっていたんだよね。理由を言い始めると長くなっちゃうんで書かないけど。

Wikipediaなんかで調べてもらえばわかると思うけど、このメタマテリアルって最初は「光学」メタマテリアルについていろいろと研究されていた。光、もう少し一般的に表現すると電磁波をコントロールしようってやつがこのメタマテリアルだったんだよね。

それが最近になって、「波の性質を持つものならこれもいけるでしょ」的なノリ(知らんけど)で、音を制御するものが研究されるようになったみたな。

で、光に対しては光学メタマテリアル、音に対しては音響メタマテリアルって呼ばれるようになったようだ。

そもそもメタマテリアルって何?

ちょっと話が前後したけど、そもそもメタマテリアルって何?ていう話。

教科書的な解説は↑でも書いたようにWikipediaに任せて、ざっくりおっさん風に説明すると・・・

要は、材料の表面に目に見えないくらい小さな模様(構造、形)を作ったら、もともとその材料になかった性質を持つようになっちゃった、的な話で理解しておけばいいんじゃないかな。

いわゆるナノテクノロジーの一つで、これが騒がれ始めた時は「光学迷彩が実現するかもしれない」とかいうのがトレンドになっていた記憶がある。

ちなみに光学迷彩はわかるよな?透明マントだな。ドラえもん的に表現すると石ころ帽子(違?)。

光学迷彩については、確かメタマテリアルではない技術で大体それに近い代物が軍事目的で開発されていて、オレ的には「これでいいんじゃねぇ」と思っている。

何でこの技術がすごいのか?

それではなぜこの技術がすごいと思われているのか?

一言でいうと、自然には起こり得ない現象を作ることができるからなんだよな。

しかも、特別な装置とか複雑な仕組みを使うんじゃなくて、微細加工を施した単体の材料でできてしまうところにポイントがある。(もちろん、微細加工の内容とか、加工で使われている材料によっても変わるから、一概に簡単ではないんだけどな)

上で例として挙げた透明マントの場合、20年くらい前は、複数台のカメラと投影機を組み合わせた仕掛けが研究されていたんだ。

一番有名なのは↓の動画かな。この動画自体は、オレが最初に見た時のよりも新しい内容なんだと思う。(オレが最初に見ていた当時(2000年前後)はVR技術の一環で研究されていたみたいだけどな)

光学迷彩 : DigInfo

でも、これってものすごく金もかかるし、第一実用性がなかったりするわけ。

材料単独で実現できれば一番お手軽なわけだけど、そういうことができる材料を見つけるのは原理的に不可能だと思われていた。そこにメタマテリアルが登場したというわけ。(話がややこしくなるけど「光学迷彩」自体については、↑の動画みたいにメタマテリアルではない方法で、できちゃってるみたいだけどな。)

これまでのアプローチとは少し変えたらすごいのができたっていうイメージかな?

材料系の研究機関とか企業は、材料に自然界にはない機能を持たせるために、人工的な材料の組み合わせで合金とかセラミックスを作ってみたり、高分子の設計をしたりしてきた。

微細化技術が発展してきてからは、薄くしたり、人工格子にすることで発現する材料の機能を研究したりもしてきた。

実際そういうアプローチで様々な現象とか機能もわかってきた。例えば、高温超電導とかもそうだし、巨大磁気抵抗なんかもそうなんだろう。

でもメタマテリアルって複雑な材料を使わなくても、微細加工だけで自然界になかった(全く発見されていなかった)性質を実現できちゃうってところにロマンがあるんだよね。

「複雑な材料を使わなくても」って書いたけど、もちろん材料の組み合わせだとか、微細加工のパターン、これまでに培ってきたナノテクノロジーの組み合わせ次第では、さらにいろいろな可能性や発見が期待できるってわけだ。

メタマテリアルの研究が進むとどうなるの?

材料レベルでいろんな性質をもたせられるようになると、第一にいろんな機器をコンパクトにできるし、高性能化も期待できる。2020年時点でもオレが子供の頃に比べたら十分にすごいんだけどな。

第二に多分、価格が安くなるから、これまではどうでもよかったもの(笑)にいろいろな機能を付けられるようになる(かも)。いわゆるIoTの促進につながるかも。

第三にこれまでできなかったことができるようになる。新しい物理現象が発見されることで科学全体が一歩も二歩も前進する可能性があると思うんだよな。

30年後には、今では想像もつかなかったような世界が広がっている可能性も充分に考えられる。

光学メタマテリアルと音響メタマテリアルは何が違う?

メタマテリアルについていろいろと書いてきたけど、もともと発見されたメタマテリアルは、いわゆる光学メタマテリアルになる。光というか電磁波を制御してやろうっていう代物。

で先にも書いたように光学メタマテリアルを音の制御に応用したのが音響メタマテリアルってやつだ。

同じメタマテリアルでも制御の対象が違う。だから、材料に施すパターンも違ってくる。光と音って、確かに「波」の性質を持つという意味では同じなんだけど、単純に波長も違うし、発生する原理も違うわけだ。

だから、音響メタマテリアルは、音の性質に合わせた設計をする必要がある。

音響メタマテリアルについて詳しく知ってるわけじゃないけど、単純に考えると音の波長に合わせたサイズの模様にする必要があるんじゃないかなとは思う。

どういうことか?

人間の耳で聞こえる音って、20 Hz~20 kHzって言われてるよな。で、これを波長にすると17mm~17mという範囲になる。(空気中で音速を340 m/sとした場合な)

恐らく、材料に施されるパターンの大きさ(間隔)は、この「波長」の大きさに合わせる必要があると思うんだよな。

まったく違ったサイズ(間隔)では、音にしても光にしても捉えることができなくて、メタマテリアルとしての効果を発揮できないんじゃねぇかな。

そうすると音響メタマテリアルは、実用的なサイズ的として10mm~100mmくらいのパターンで構成することで、音に対して何らかの作用を施すことができるんじゃないかってわけだ。

10mm~100mmの波長とそれに対応する周波数は次のようになる。

  • 10mm→34 kHz
  • 100mm→3.4 kHz

つまり3.4 kHz~34 kHzまでの音に作用できるということ。

例えば、3.4~34 kHzのノイズを吸収するような音響メタマテリアルを設計する場合、1cm~10cmくらいの間隔をもったパターンを施す必要がでてくるということな。

そのようなパターンはいろいろと考えられるんだろうけど、一つの答えが今回話題になったKEFの迷路みたいなパターンなんだろうな。

これって、大きすぎてナノテクノロジーでもなんでもないレベルだ。普通の模様だな。逆に考えると、筐体とかの模様をちょっと変えるだけで、音が制御できちゃうかもしれないということだ。

今回の音響マテリアルを使ったスピーカーはどこがすごい?

冒頭の話に戻すけど、今回話題になった音響メタマテリアルを使ったスピーカーはどこがすごいんだろう?

実はこのスピーカーの詳細(現物の写真も含めて)がわからないんではっきりとしたことは言えないんだけど、オレが現在知っている情報だけからいうと、次のようなところかな。

  • 迷路みたいな模様の板を挿入しただけで、スピーカーのドライバーユニットからでるノイズを99%カットできるようになる

この「迷路みたいな模様の板」って普通のプラスチックの板だからな。そこに施された迷路模様こそが研究の結晶ともいえるものなんだよな。

プラスチックの板だから、スピーカー本体は重くなることもないし、電力を消費することもない。しかもドライバーユニットからでるノイズの99%を吸収できるというのが、すごいわけだ。

もっというと、何度も言うけど、これただのプラスチックの板だから。ほとんど原価かかってないようなものなんだよな。でも機能はすごいから、価格に転嫁できる。メーカーはその分丸儲けってわけ。

音響マテリアルは身近な存在になるかもしれん

音響メタマテリアルは既に日産をはじめいろんな企業が研究しているみたいだな。

日産は今年1月のCESで発表してるしな。やっぱ民生用の製品を作って販売しているような会社は注目を集めやすいし、分かりやすいんだよな。

一応、日産の音響メタマテリアルに関して参考リンクを↓に張っておくな。(Car Watchの記事)

日産、格子構造とフィルムの遮音材「音響メタマテリアル」をCES 2020で公開
 日産自動車は1月7日、格子構造の上にフィルムを貼るという構造の新しい遮音材「音響メタマテリアル」を「CES 2020」(ラスベガス コンベンションセンター:1月7日~10日)に出展した。

何度か書いてるように、音響メタマテリアルって、ナノテクノロジーでもなんでもないんだよな、多分。少なくとも今のところはな。

そうすると先端技術分野ではないメーカーでも、この分野に参入して注目を集めることができる余地はあるかもしれないな。

素人のオレ的には(今のところ)メタマテリアルの作用は、波の性質をもったモノ(光とか音とか)との相性なんじゃないかと思ってる。

ただ、もしかしたら温度とか空気の流れの制御にも応用できるじゃねぇかな・・とも思ったりもしてる。その分野の専門家の意見を聞いたわけじゃないし、ただの思いつきだけどな。

いずれにしても注目の技術分野であることは確かだと思う。だから企業のプレスリリースで「メタマテリアル」ってついたら要チェックかもな。

まとめ

いつもながらまとまりのない記事になったけど、音響メタマテリアルについて今思ってることを書いた。

メタマテリアル、少なくとも音響メタマテリアルって、↑でも書いたけど基本的なパターンのモノは特別な技術がなくてもプラスチックに成型できたりすると考えると、意外と真似されやすいんだよな(笑)

だから、いろんな機能を簡単にしかも安価に付加できる反面、偽物も出やすい技術といえるのかも。

偽物という以前に、これまでは偽物ばかり作っていたようなメーカーがこの技術を研究してオリジナルの新製品を出してくる日は遠くない、はずだ。

ただ、逆にいうと、こういったほんの少しの前進でも食らいついていくくらいの勢いが日本勢には必要だよな。

そうしないとどんどんと他国と差をあけられていく一方だ。

借金漬けのオレが偉そうにいうことじゃないけどな。

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